第21回目の投稿です。わらしです。
よろしくお願いいたします。
今日は奥村さんのツイートから。
上のように、引用リツイートをした背景やその中身について、書いていきます。
要するに、スポーツの現場から考えると、素振りのような「型」練習は必要か、という命題になりますね。
結論から言ってしまえば、動きの「型」だけのための素振りは必要ない。
しかしながら、「型」の意識次第では、素振りはパフォーマンス向上に寄与することもある、と考えています。
どっちつかずな意見で大変恐縮ですが。
よく私も聞かれる質問でしたので、その背景や理由を踏まえて、こちらの記事に記しておきます。
動きと意識|「素振り」は必要かを考える
目次
- 運動の大原則|運動一回性の原理
- 自由度を制限しない多種の能動的な運動を
- フォームや動き方の「正しさ」に固執しない
1. 運動の大原則|運動一回性の原理
私がセミナー登壇したり、指導現場でコーチングの話をするときに必ず念頭に置くのがこちら。
スライドとしても、このように示すことが多いですね▼

むしろ今日の記事の内容はこちらのスライドに集約されている気もします。
まず最初に。
運動というのは、「同じ運動は、2度起きない。」という大原則があります。
パッと見で同じ “ような” 運動はあるのかもしれませんが、100%同じ運動というのは存在しません。

この考え方を受け入れることから、コーチングの理解が始まる、とも言われます。
この運動一回性の原理を保証するために必要なのは、「自由な運動」と「適切な運動」を捉えることです。
2. 自由度を制限しない多種の能動的な運動を
奥村さんのツイートでは、大工さんの釘打ちの例でしたが。
卓球やバドミントン、サッカーなどの球技を中心として、目標物に対して自分の腕や足を「到達させる」運動は、総じてこの原則が当てはまります。
バイオメカニクス系の研究、特にスポーツバイオメカニクスの分野ではこの分析は進んでいて。
的にあてる運動課題遂行時の軌道、簡単に言えば「フォーム」や「型」が正確に同じような軌道を通ることで、『到達運動の正確性は落ちる』ことが明らかになっています(Todorov & Jordan 2002)。
つまり、軌道やフォーム、「型」にこだわりすぎると、最終的に思ったところに当たらない、正確性に欠ける結果を招いてしまう、ということですね。
これは、人間の脳のフィードバック機構や筋出力のような機能から、立証されています。
具体的には、筋出力(力を出すこと)は、常に一定の力を出すことが難しく、その出力が上がれば上がるほど、そのばらつき(分散)が大きくなると言われています。
加えて、脳のフィードバック・フィードフォワードのなかで考えると。
【ノイズ=不確実性】が身体への運動指令の中で入らないことはなく、その運動自体の感覚フィードバック情報の中でも、ノイズが入ります。
トレーニングでは、このノイズをどれだけ少なくするか、の勝負になってくるので、「型」や「フォーム」それ自体が重要ではなくて。
自分が動かそうとする動き方ができたかどうか、それをどう感じたか。
このノイズへの感受性と自由度を確保した、能動的な(自分が思った通りの)動きができるかどうか、がとても大切になってきます。
3. フォームや動き方の「正しさ」に固執しない
ここまで色々と記載してきましたが、一番大切なことは何かというと。
「正しさ」に固執しないこと、と指導現場では繰り返し言っています。
特に日本では、フォームや型にこだわりすぎる風潮があるなと思っていて。
集団で素振りを繰り返す時間をただ延々とやる、はたから見れば「修行」的要素を伴うことが多いな、と思っています。
「メンタルを養うんだ!」「皆で一緒のことを乗り越えるからこそ一体感を生むんだ!」というような声を聞いたことがありますが。
(「…それって素振りの本来の目的とは異なりますよね?」とポロッと口に出してしまったこともあります。)
海外の選手の練習や、コーチとお話をしていると。
「日本人はなんでそんなに振り方や『素振り』にこだわるんだ?」と問われたこともあります。
実際に、海外の練習風景を見てみると、素振り要素はほんの一部分の「意識づけ」に使われるだけで、あとは競技動作に直結するような動きや実際の打ち合いを重視して練習メニューを構成されていることが多いんですよね。
これは、日本のトップチーム・トップ選手にも言えることかもしれません。
「自分のパフォーマンスをどのようにしてあげるのか」に注力すると。
フォームの正しさや腕の軌道の正確さよりも、「自分の身体を自分の意図通りに動かせるか」、そしてその結果が相手に対してどのような影響を及ぼすか、の方が大切なことに気がついていきます。
この意識こそが、最終的な到達点(ストロークの正確性)やいわゆる「無駄のないフォーム」を形づくると思います。
型やフォームにだけこだわって追求する”練習のための練習”よりも、その到達点やパフォーマンスを追求するために、「自分の身体を自分がうまく動かすこと」に注力することで、”結果として”「型」や「フォーム」が洗練されていくことがあります。
最後に、コーチとして何をどう大切にするかをまとめたものがこちら。

今後も、スポーツの現場でこのようなことを考え続けていきたいですね。
今日はここまで。
● 藁科 侑希(わらしな ゆうき)|わらし
【トレーナー×コーチ×研究者×教育者の現場視点で情報発信】
東京経済大学特任講師|東洋大・千葉大非常勤講師 (体育実技)
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【保有資格】
博士(スポーツ医学 筑波大学)
日本スポーツ協会公認バドミントンコーチ3
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツコーチ
日本障がい者スポーツ協会公認中級障がい者スポーツ指導員
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツトレーナー
NSCA認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト
NSCA認定パーソナルトレーナー
高等学校教諭専修免許(保健体育科 茨城県)
中学校教諭専修免許(保健体育科 茨城県)
赤十字救急法救急員